あなたは靴のつま先が気になったこと、ありませんか?
自分が履いている靴をふと見たとき、つま先だけ色が薄くなっていた…
お父さんの足元に目をやってみたら、つま先だけ小さな穴が空いていた…
どんなに素敵な靴でも、つま先が薄くなって色も落ちていたり、ましてやつま先に穴が空いていたりなんかしたら、台無しです。
削れてしまいやすいつま先ですが、修理に出したことがない、という方も意外と多いはず。
今回は、靴修理のプロに、つま先補強の取材をしてきました。
職人につま先の修理をお願いすると、実は新品のようにきれいになります。
プロだからできる仕上がりに、きっと驚かされるはずです。
目次
今回、靴のつま先補強をお願いしたのは、靴修理かみとりの三森(みつもり)さん。
靴修理かみとりさんは、オールソール、ハーフソール、かかとゴム修理、今回のつま先補強といった靴修理全般を行っている靴修理のプロ。
オールソールやハーフソールって何?と思われるかもしれませんが、そちらはのちほど詳しく解説します。
靴について学ぶ学校で、店長の神鳥(かみとり)さんの後輩だったという三森さん。
丁寧につま先の補強をしてくれました。
修理したのは、こちらの靴。
まずは靴を裏返さずに、つま先の削れを確認してみましょう。
裏返さなくても、靴底のつま先の部分が削れてとても薄くなっているのが分かります。
次に、靴を裏返して靴底を見てみましょう。
この靴は革の靴底。
もともとは黒っぽく染色されていましたが、履いているうちに完全に色が落ちてしまいました。
つま先の部分が薄くなってしまっているのとあわせて、なんだか少し頼りない印象の靴になってしまっています。
そして、今回の修理にはお客さんからリクエストが来ていました。
「この靴は『修理箇所だけ新品のようにならないように、馴染ませてほしい』というご要望を頂いています。かかとの部分だけ浮かないように、修理していきます。」
仕上がりのリクエストが出来るのは、とてもうれしいですね。
つま先の補強材をどのように靴に馴染ませるのか、プロの技が今から楽しみです。
今回やってもらう修理の名前は、「つま先補強」。
つま先補強のことを、店長の神鳥さんに教えていただきました。
靴の修理には様々ありますが、その中でも今回教えてもらったのはよく行われる4つの修理について。
かかとゴム修理(1)
すり減ったかかとのゴムを交換する修理。
つま先補強(2)
履いてすり減ったつま先を補強したり、新品の靴のつま先が削れにくくなるように補強する修理。
オールソール(3)
靴底全体を交換する修理。
ハーフソール(4)
靴底の前半分を補強する修理。
今回のつま先補強は、(2)のように靴底のつま先部分の修理です。
つま先補強をする靴は、大きく分けて2つに分けられます。
「つま先補強をする靴には、削れてしまった靴と、新品やまだあまり履いていない靴の2種類があります。
つま先が削れてしまったときは、ゴムや革で補強してつま先を綺麗にします。
新品の靴のつま先の補強では、スチールを使ってつま先を強くして、あらかじめ削れにくくしておくんです。」
実は一番すり減りやすい場所、つま先
「つま先はこまめに補強するものだって知っていましたか?
実はつま先って、『靴の中で一番すり減りやすい箇所』なんですよ。」
つま先には歩く時に蹴り出す力が加わるからだそう。
知りませんでした。
「特に女性用のパンプスのつま先は薄いから、ずっと放っておくと穴が空いてしまいます。
早いうちに、修理が必要になりますね。」
修理は、3~4ミリ削れたら頼んでほしい
ソール先端の厚みが目に見えて分かるくらい削れている方は、修理をするのがおすすめだという神鳥さん。
「つま先がすっかり削れて、より深い層のアッパー部分がむき出しになってしまう前に、修理に出して欲しいですね。
ひどくなってつま先に穴が空いちゃった、となると修理はしますが、修理範囲が広くなってお返しできるまでに時間がかかったりお値段が張ったりします。
そして何より、靴を傷めてしまいますね。
だいたい3~4ミリ程度削れたらつま先を補強する、というように、修理をこまめにしながら履き続けると、靴が長持ちしますよ。」
今回プロにしてもらったつま先補強の流れは、こちら。
1. つま先のすり減り部分を取り除きます
2. つま先の補強材を作ります
ここまでで、補強材を貼り付ける準備ができました。
ここからは、実際に貼り付けの作業。
3. つま先と補強材にプライマーとのりをつけます
4. 補強材を貼り付けます
5. 圧着します
6. グラインダではみ出た部分を削り、調整します
これで、補強材がしっかり貼り付けられました。
最後に仕上げの作業を行います。
7. 補強材をインクで染色します
8. 靴の状態に応じて、ツヤ出しをします
これで、つま先補強の全工程が完了です。
プロが靴修理に使う機械
靴修理を始める前に、プロが使う機械の紹介をしてもらいました。
プロの技術を支える機械を、まずはチェックしてみましょう。
・グラインダ
研磨紙を付けて回転させ、物を研磨する機械。
グラインダは、実は靴の修理には1番といってもいいくらい大切な機械。
目の粗い研磨紙、目の細かい研磨紙、そしてエアペーパーというよりやわらかな研磨紙など、プロは何種類もの研磨紙を削りたい量や靴の箇所などによって使い分けています。
・バフ
靴の底面や側面にワックスを塗りこみ、磨き上げる機械です。
最後のツヤ出しは、こちらのバフにお任せ。
フワフワのバフにかけると、ピカピカになります。
プロが靴修理に使う道具
次に、プロの道具もご紹介。
職人の手に馴染んで、靴を蘇らせる道具たちです。
釘切り(1)
靴の釘を抜いたり、切ったりするための道具。
ソールはがし(2)
靴底をつまんで、剥がすための道具。これを使うと、ぺろりと剥がれます。
ハンマー(3)
部品を靴に打ち付けるのに使います。今回は、補強材をつま先に貼り付けるときに活躍します。
リペアばさみ(4)
ゴムを切ったり、革を切ったりするのに使う、修理用のはさみです。
斜ニッパー(5)
刃が傾斜したニッパーのこと。ソールはがし(3)では取り切れないものを取ったり、釘を切ったり抜いたり、と万能な道具。
これで、つま先補強の予習は完璧。
プロの靴修理を、さっそく見ていきましょう。
補強材をつま先に貼り付ける準備から始めます。
1. つま先のすり減った部分を取り除く
つま先のすり減った部分を、グラインダやカッターを使って削り、取り除きます。
まずはじめに、つま先のグラインダで削る部分に定規とペンを使って印をつけます。
印をつけたら、その部分をグラインダで削ります。
グラインダでの削りが終わったら、今度はカッターナイフを使ってより細かく削っていきます。
この作業は、つま先に補強材をより強く接着するための工夫なんだとか。
「つま先は歩くときに強い力がかかって曲がる部分なので、つま先補強では補強材が剥がれないように修理することが一番といっていいほど大切です。
そのための工夫がいくつかあるのですが、特にこのつま先を削る工程では、補強材との接着面がぴったりくっつくように削ります。
細かい調整になるので、職人の手作業で丁寧に進めます。」
2. つま先の補強材を作る
つま先に貼り付ける補強材を、リペアばさみやグラインダを使って加工します。
今回貼り付ける素材は、ゴム。
リペアばさみで切った後、先ほど削ったつま先の接着面にぴったり合うように、グラインダで削ります。
こちらが、出来上がった補強材。
「つま先補強には大きく分けて3つ、ゴムと革とスチールでの補強があります。」
聞いてみると、それぞれの素材で特徴があるのだといいます。
「ゴムは雨に強く、クッション性があり、一番頼まれる方が多いですね。
革はお洒落で、元が革の靴底であれば風合いを損なわないのが魅力ですが、雨に弱いです。
スチールは耐久性に優れていますが、着用感は少し重く、固くなってしまいます。
スチールは土台がしっかりした状態で貼り付ける必要があるので、新品の状態で補強するのがおすすめ。削れた後ではスチール貼り付けの前にも一度つま先補強が必要になってしまうんです。」
お気に入りの靴なら、最初にスチールで補強するのも良さそう。
素材によって履き心地も少し変わってくるなら、全部試してみたいですね。
ここからは、作った補強材をつま先に貼り付けていきます。
1. つま先と補強材にプライマーとのりをつける
削りをいれたつま先と、作った補強材にプライマーとのりをつけます。
まずはじめに、つま先と補強材の両方にプライマーを塗る三森さん。
「プライマーは、のりをつけるためののり、のようなものです。このあとつけるのりの接着をよくする、下塗り材の役目があります。」
これも、つま先に補強材をしっかりとつけるための工夫ですね。
「プライマーは、10種類を使い分けています。ゴムや革の違いはもちろん、例えばゴムの中にも天然ゴムや合成天然ゴム、ウレタンゴムなどたくさんの種類がありますよね。それぞれに合ったプライマーを使うことでより粘着力を高めています。」
プライマーを少し乾かしたら、つま先と補強材にのりを塗ります。
のりを塗った後もすぐには貼り付けず、テープを剥がして少し乾かします。
「のりを乾かす時間は、温度や湿度によって異なるので、大体の目安というのはないんです。そこで大切になってくるのが、自分の手の感覚です。触ってみると、接着していいタイミングが分かるんですよ。」
ちょうどいい乾き加減になったら、ドライヤーをあてます。
「ドライヤーで熱すると、接着剤が活性化されて粘着力が増します。これも、補強材をしっかりくっつけるための工夫ですね。」
2. はりつける
のりをつけた補強材を、つま先につけます。
接着面を丁寧に削っているので、ぴったりと合わさります。
3. 圧着する
ハンマーで叩いて、補強材をつま先に圧着します。
「つま先補強では、圧着機ではなく手でハンマーを使って圧着します。
圧着機では、靴の端にあるつま先の方まで十分に力が加わりません。
歩くときに強い力が加わってよく使われる部分だからこそ、人の手を使って確実に圧着します。」
4. 調整する
接着した補強材を、リペアばさみやグラインダを使って整えます。
まずは、リペアばさみではみ出ているゴムを落とします。
次に、グラインダでの調整を行います。
「補強材が靴に馴染むように、靴底のラインに沿うように削っていきます」
後からつけた補強材が靴とぴったりと一体化してくれないと、剥がれやすくなってしまいます。
修理した箇所が剥がれるることのないように、丁寧に細かな調整をする様子が印象的でした。
最後に、インク染色とツヤ出しで仕上げます。
1. 補強材に色をつける
修理したつま先が靴に馴染むように、インクで染色します。
「つま先以外の部分の状態に合わせて染色します。
つま先以外は使いこまれて落ち着いた色味なのに、つま先だけ何度も色を入れてまるで新品のようだったら、変ですよね。だから今回は、一度塗りで仕上げます」
側面だけでなく、底面も染色していきます。
靴に合ったやわらかな黒に染色され、より高級感が出ましたね。
2. ツヤを出す
最後に、お客さんの要望や靴の状態に合わせ、必要な場合はツヤ出しをします。
今回のつま先補強では、マットな質感に仕上げるためにツヤ出しはしていないので、簡単なご紹介だけ。
ツヤ出しに使うのは、こちらのバフ。
バフでワックスを塗りこんで磨き、ツヤを出します。
これで、つま先補強の修理は完了です。
さて、いよいよです。大きく削れていたつま先は、プロの手にかかってどうなったのでしょうか。
まずは裏返さずに見てみましょう。
削れてとても薄くなったつま先が、ゴムの補強材でもとの厚みを取り戻しました。
後からつけた素材だとは思えないくらい、靴底のラインに沿って滑らかなカーブを描いていて、靴に一体化しています。
このつま先なら、補強材がでこぼこして歩きにくいなんてことはなさそうですね。
靴底も綺麗に染色してあり、思わず誰かに見せたくなりそう。
裏から見ても、つま先の補強材がとても自然に靴底に馴染んでいます。
つま先が大きく削れて、靴底の色も落ちていたなんて信じられないくらいの仕上がりです。
まるで新品のように綺麗な靴底ですね。
最後に、靴修理かみとりの店長の神鳥さんに、靴を修理することについてお話をお聞きしました。
つま先に穴が空いてしまった、というような難しい修理のときでも修理してしまうという神鳥さん。
「他店で修理を断られたという靴、難しい修理でも出来るだけ『できない』と言わないようにしています。
もちろんちょっと靴の状態が気になるなと思った段階で修理をしてもらうのが、靴の長持ちの秘けつです。
ですが、壊れてしまった大切な靴、そして下駄箱に眠っている、ちょっと修理は難しいかなという靴でも、修理に出してみてください。わたしたちプロなら、誠心誠意、修理しますよ。」
修理を頼まれるのは、お客さんにとって大切な靴。そんな大切な靴を、職人さんはできる限り100%に近付ける修理をしています。
その道のプロだからこそできる完璧な仕上がりに、感動でした。
そして、今回のつま先補強の修理の様子を動画にまとめました。
ぜひ動画でもプロの靴修理の技を確認してみてください!
大切な靴を長く履くための、靴一足一足に合わせた修理。
今回のつま先補強の修理では、つま先と補強材をぴったり強く接着させるための、プロの工夫が盛りだくさんでした。
まるで新品の靴のように、補強材が靴に馴染む様子は驚きです。
歩くための靴、そして歩くときに力のかかるつま先の修理の精度は、職人の技術のたまものです。
今回、靴のつま先補強の修理を担当してくださったのは、靴修理かみとりの三森さんでした。
大切な靴を大切にして長く履くための修理を、ありがとうございました!
「うちの靴も修理したいけど、いくらくらいなんだろう?」「どうすればいいんだろう?」
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