
植物性なのに、あのマヨの味!卵を愛するキユーピーが、卵を使わない食に挑戦する理由
地球環境や、健康上の理由によって、いつもの食事ができなくなるかもしれない。食の社会課題に対し、サステナブルで多様な食の選択肢の提供を目指すのが、GREEN KEWPIE(グリーンキユーピー)です。
キユーピーは、発売100周年のマヨネーズから始まり、卵の加工品も展開する長く愛されてきた企業。なんと、キユーピーグループで日本の鶏卵生産量の約10%を使用しているそうです。そんなキユーピーが、今、植物性原料を使用したプラントベースフードの商品開発に挑戦しています。
どんな商品があるのか、GREEN KEWPIEを担当する綿貫智香さんに話を聞きました。
あの味と同じ!植物性マヨネーズのおいしさのワケ

── GREEN KEWPIEは、どんなブランドですか?
赤いキユーピーといえば、赤い網目模様をイメージされる方が多いかもしれませんが、GREENKEWPIEのブランドカラーはグリーンです。環境への意識や多様性をキーワードに、サステナブルな食を展開しています。
背景には、HOBOTAMA(ほぼたま)の開発がありました。HOBOTAMAは、植物性だけど、味も見た目もほぼ卵のプラントベースフードです。販売後にお客さまからすごく反響があり、卵を食べられない方や、控えたい方がたくさんいらっしゃると気づきました。多様な世の中で、人々の食の選択肢は、少しずつ変わっている。そういう人々の食生活をより楽しくするため、商品をつくり、その思いを届けるために、GREEN KEWPIEというブランドを立ち上げました。
── 今は色々な商品がありますね。どんなものが人気ですか?
キユーピーといえばマヨネーズということで、マヨネーズタイプはやはり好評です。そしてもう1つは、実は、シーザーサラダドレッシングです。通常のシーザーサラダドレッシングには、チーズがたくさん入っていて、たくさんかけるのは罪悪感があるという方もいます。その点、「GREEN KEWPIE 植物生まれのシーザーサラダ ドレッシング」はカロリー25%オフ※。プラントベースフードだからではなく、カロリーを控えるために使う方も多いです。
大人になってから、食生活を見直したり、菜食になったりする方も結構いらっしゃいます。そして「シーザーサラダを20年ぶりに食べた。おいしくて鳥肌が立った」という方もいらっしゃいます。豆乳を発酵させたものと、隠し味に味噌を使っていて、日本人の味覚に合ったおいしさなんです。
※食品成分表2015フレンチドレッシング対比カロリー25%カット

── GREEN KEWPIEのマヨネーズタイプ、とてもおいしかったです。赤いキャップのキユーピー マヨネーズと同じ味だと感じました。
リンゴ酢を使っているのがポイントです。赤いキャップのキユーピー マヨネーズとほぼ同じお酢のブレンドなので、味が変わらないと感じられたのだと思います。
開発のメンバーも、「あの記憶にある味を目指そう」と設計をしています。科学的に分析したとしても、植物性のマヨネーズと、卵を使ったマヨネーズは、同じにはなりません。でも、不思議と「あれ、一緒だ」と感じる味に仕上がりました。
── パスタソースも、使いやすそうです。
GREEN KEWPIEのパスタソースは、すべてあえるタイプ。気軽にお使いいただけますし、ソースの温めがいらない分、CO2排出量が抑えられます。
そして、パスタソースはご飯にあえることもできます。おすすめなのが、オムライス風アレンジ。まず、ボロネーゼのパスタソースをご飯に混ぜてチキンライスのようにします。その上に、HOBOTAMAのスクランブルエッグ風をかけると、トロトロのオムライスができあがります!
── アレンジして食べられるのは嬉しいですね。
私たちはおいしさと、調理性にこだわっています。キユーピーは、調味料メーカーで、長年「食卓」をテーマにしてきました。マヨネーズもドレッシングも、お客さまが好きにアレンジできる調味料だからこそ、食卓での登場シーンも多くなります。ライフスタイルの一環として楽しんでいただけたらと思っています。

── 調味料メーカーとしての知見も生かされているんでしょうか?
特にマヨネーズやドレッシング、パスタソースは今までの知見が生きています。さまざまな技術を用いており、プラントベースフードだからこれぐらいでいいよねという開発はしていません。
HOBOTAMAは、卵加工のスペシャリストのチームが、本当に苦労して生み出した商品です。例えば、スクランブルエッグ風は、開発者が京都で湯葉を食べて「これだ!」とインスピレーションを受けて今の仕上がりが完成したんですよ。職業病かもしれませんね。京都旅行していただけなのに(笑)。
食べられない人も、食べられる人も、一緒に楽しめる
── 購入するのは、どんな方が多いですか?
多種多様な方が、買われています。ヴィーガンやベジタリアンの方が、ご自身の基準に合っていれから選んでいただけていているのかなと。コレステロールの制限を受けている方もいれば、ただ味が好きだからという方もいらっしゃいます。
HOBOTAMAは、通販のみの販路限定なこともあり、お客さまは卵アレルギーの方が多いと思います。実際に食べているのはアレルギー患者さんだけではなく、その周りにいるご家族やお友達も多いですね。

── 周囲の方も一緒に楽しめているんですね。
そうですね。卵やお肉を食べたい人も、食べられない人も、ともに食卓を囲めることが大事だと思います。食事は、ただおいしいものを食べるだけではなく、人と楽しむことが重要な時もありますよね。そういうときに手助けになる食材があるといいなと。
── 環境のために、プラントベースを選ぶ人もいます。今後、そういった層も増やしていきたいですか?
食文化や食習慣は、急には変えられません。いつもの食事が、心を落ちつけたり、元気にしてくれたりしますよね。私たちはそこの否定はできないし、むしろそういう存在でありたい。一方で、未来には、いつもの当たり前の食事が当たりではなくなってしまう世界が来るかもしれない。そう考えると、今からこういう選択肢も用意しておいて、気軽に楽しんでもらうことがいいと思っています。
「このままでは環境が悪化するぞ。怖いぞ怖いぞ。今これ食べなきゃいけないんだ」みたいなことではなくて、「なんか良さそう」「いつもと違うのだけど食べてみよう」と、手に取ってみたら、意外とおいしい。それが実はプラントベースだったというのがいいなという気持ちで展開しています。
日本の卵生産量の10%はキユーピーグループが使用!卵を愛する会社だからできたこと
── 当たり前の食事が当たり前じゃなくなるというのは、具体的にどんなことが考えられるんでしょうか?
気候変動や人口増加によって、世界的にタンパク質を中心に食物が不足するという統計があります。それを社会課題として捉え、解決するために、さまざまな企業がプラントベースフードの開発を始めています。
タンパク質でいうと、日本では卵は国民食ですよね。消費量は世界No.2です。そして、キユーピーグループは日本の卵の生産数の約10%を使っています。1919年の創業から、マヨネーズをはじめ、卵の魅力を引き上げた商品をお届けしてきました。だからこそ、HOBOTAMAのような商品の開発に挑戦し、GREEN KEWPIEに発展しました。

── GREEN KEWPIEの発案は綿貫さんがされたんですよね。
はい。2017年頃、キユーピーがこれから目指す姿を「2030ビジョン」としてまとめたのですが、私はその検討メンバーでした。そのときに、未来の予測データを見るわけですよ。人口も急激に増えたりして「うわ、こうなっちゃうの?」と。私は、2人の子どもを持つ主婦の一人として参加して、「2030ビジョンを実現するのが私の仕事だ」「何か行動しなければ」と思ったのがきっかけでした。
── 社内で「まさか卵を使わないなんて!」みたいな反応はなかったですか?
驚きや戸惑いの声はありました。私たちって卵を「愛している」レベルなんですよ。日本の卵のリーディングカンパニーであろうとしている中で、HOBOTAMAをやる。頭ではわかるけれど、心はついていかない。でも、気候変動をはじめとする様々な問題は深刻化しています。多くの人が自分事にできていない一方で、みんなで抱えている課題なので、企業が具体的に動くべきだろうと思い、進めてきました。
──今後はどのように展開していきたいですか?
プラントベースフードは、1つの選択肢であって、そればかりを食べてくださいと言うつもりは全くございません。ただ、サステナブルな選択肢が増えることで、地球温暖化の抑止や環境保全のために、少しでもいいことをしたいと思ったときにアクションが取りやすくなるかもしれない。多様な選択肢のある世界は住みやすいし、自分らしく生きることにつながると思うので、そこに応えていきたいですね。

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GREEN KEWPIEのマヨネーズタイプを食べて、おいしさに驚きました。中には、GREEN KEWPIEの方が味が好きという方もいるそう。動物性の食品が食べられない・控えたい人はもちろん、そうではない人も一度試してみてはいかがでしょうか?
ワタシトJOURNAL
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※本記事の内容は、本記事作成時の編集部の調査結果に基づくものです。
