
街中に青いボックスが増加中!捨てない選択肢「PASSTO」で不要品を次の人へ
不要品を捨てるにはもったいないけど、売るのも面倒くさい…そんなとき、パストしてみてはいかがでしょうか?
PASSTO(パスト)は、街中に設置されたボックスに不要品を入れるだけで、リユースやリサイクルされるサービスです。最近は「宅配PASSTO」もスタートしたのだとか。PASSTOの特徴や、背景にある社会課題について、PASSTOを運営するECOMMITの坂野晶さんに話を聞きました。
「燃やすごみに出す」に代わる身近な選択肢を

── PASSTOはどんなサービスなんでしょうか?
みなさんが使わなくなったものを回収して、それを国内の拠点で丁寧に選別し、ほしい人たちに繋ぐサービスです。「PASS TO」という「次の人に繋げる」とか「人に渡す」を意味する英語が由来です。「パストする」と、動詞としても使ってもらえたらと思っています。
日本では、不要品を手放すときに、捨てる選択肢が圧倒的に身近にあるんですよね。日本はごみをしっかり集めて適切に処分するインフラ、つまりごみをしっかり燃やすインフラを構築してきました。一方で、それが確立しすぎているがゆえに、循環させる選択肢への転換が難しいなと思っています。
──簡単に捨てられる環境だからこそ、リユースやリサイクルがされにくいんですね。
例えば、環境省の調査では、洋服を手放すときに、約7割の方がごみとして出していることが明らかになっています。さらに、ごみに出す理由として、多くの方がそれが1番手間がかからないからと答えています。
そこで、ごみに出すという選択肢に代わって、循環させる選択肢を増やしたいというのが、PASSTOです。そのために、生活動線上にある身近な場所に、PASSTOの拠点を増やしています。現在は、ショッピングモールや郵便局、あるいはマンションの共用部など、色々な場所にPASSTOを置いていただいています。

── 宅配PASSTOも、LINEヤフーの「サストモ」とともに2025年3月から始まりました。
これまでなかった場所にPASSTOを置くなど、拠点数の多さ・多様性の確保は、今、非常に力を入れています。その取り組みの1つとして、宅配のサービスも始めました。
日常的に不要品を出しやすくすることを考えると、ご自宅から送れるのがもっとも便利ですよね。お買い物は、すごく簡単になりました。携帯でポチッとしたら翌日には届くサービスもあります。ものをつくって販売するという動脈側の物流はすごく整っているのに、手放すときは、同じ手軽さではできません。静脈側を身近にするのが今回の宅配PASSTOだと思います。よく私たちの代表は、「Amazonの逆版になるんだ」と言っています。
私たちは地球1.75個分の資源を使っている

── 他のリユースやリサイクルのサービスとの違いはなんでしょうか?
私たちの強みは、回収したものを、国内の拠点でしっかり選別をしているところです。国内で分けることで、まず国内の需要に応えることを優先しています。国内のリユース品を扱う事業者さんへの卸販売だけでなく、ネット販売や、オンラインオークションなど、さまざまなチャネルで販売しています。海外にも、長年のお付き合いのあるお客様がおりますので、ニーズに合わせたものを選別してお出ししています。
選別では、洋服だけで80種類以上の種別に分けます。しかも、国内で丁寧に選別するとなると、高い人件費がかかるわけです。それでも、国内で選別して、国内でも国外でもごみにしないことを大事にしています。
近年はリサイクルパートナーさんとの連携を強化し、リユースができないものは、リサイクル原料として卸しています。しっかり流通先の確保があるからこそ、廃棄せざるを得ないものが少なく、リユース・リサイクル率は約98%です。
── ほとんど廃棄せずに済んでいるんですね。ごみが増えると、やはりCO2の増加や、埋め立て地が問題になるということでしょうか?
その通りです。さらに、ごみを出しているということは、それだけ新しいものを作るために資源を使っているということです。その消費スピードは、世界的に非常に早くなっています。
地球は1個しかないですが、いま私たちは地球1.75個以上のスピードで資源を使っているといわれています。それを1個に収めなければいけないというのも、大きな課題感としてありますね。

リセールや新素材へのリサイクルで循環を閉じる
──アパレル企業との取り組みも増えていますね。
最近は、アダストリアさんなどのアパレル企業様と連携をして、リセールの取り組みを始めました。我々が回収した服の中から、再び販売する衣類をピックしてお戻しをする。そして、ブランドさんが認定中古品などとして販売をする取り組みです。

リセールの仕組みによって、作る側が「リユースもいいよね」「再流通させよう」という前提で売りはじめると、製品開発が変わるはずなんですよ。2、3回売れる前提で作られるならば、耐久性があがり、製品の寿命が変わります。その分、新品を作る量を、ちょっと減らしてもいいかもしれない。そうなると、天然資源の投下量を減らせますよね。これは私たちが目指したい方向性の一つです。
また、ものづくりにおいては、再生素材を使う方向にも動かないと、循環の輪は閉じません。それが次の大きなジャンプかなと思っています。現在は、伊藤忠さんとのプロジェクトから生まれたリサイクルポリエステルの「RENU」や、三星毛糸さんの「ReBirth WOOL」などの素材に戻す取り組みがあります。その素材を活用するブランドさんが増えないといけませんが、まずは再生素材に戻すところを頑張っています。
── そのためにも、回収を増やしているわけですね。
そうですね。私たちは、インフラになりたいと言い続けているのですが、ものづくり側にリユース品や再生素材を安定的に供給できることもインフラの役割です。その意味でも、今回の宅配などで、パストしてもらう選択肢を増やす工夫をしています。

── 坂野さんは以前から、廃棄物の削減に取り組まれてきました。なぜECOMMITに入られたんでしょうか?
私はずっと、自治体や地域とともに取り組んできました。特に政策の領域で、仕組みをつくってきたんですが、時間がかかるんですよね。もちろん、それはそれで非常に大事で、今も続けてるんですけれども、やっぱりスピードを早めないといけない。ビジネスは、まさにスピードを早める大きなやり方だと思っています。
ECOMMITは、ものを集めて再流通させるというサービスを、メインのソリューションとして持っています。それゆえに、その1つのソリューションを広げられるスピードはとても早いわけですよね。私は1つの地域で、100のことをやろうと思って時間をかけてきた。ECOMMITは、ソリューションは1つかもしれないけど、100の地域で始められる。それがビジネスの力です。
この領域は、実際に物を動かすために、物理的な投資を伴うので、本当に難しいんです。だからこそ、社長が個人で創業して以降、17年間、頑張ってきたスタートアップがいるということ自体が希望だと感じます。逆に、この会社が頑張れないと、日本のサーキュラーエコノミーは難しいんじゃないかと思っているところが正直あって。そこを頑張るために、私もやっていきたいなというのが個人的な思いです。
── 最後に、読者にメッセージをお願いします。
3月からスタートしたLINEヤフー「サストモ」からの「宅配PASSTO」はぜひ1度試していただいて、フィードバックをいただけたらと思います。
あとは、PASSTOを見つけたら、設置している場所の人に「いいですね」って声をかけてほしいです。きっと喜ばれるし、そんなお声があるから、とサービスを続けてもらえる理由になるかもしれません。そうして、仕組みをみんなで広げてもらえるといいなと思います。

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今も拠点数が続々と増えているPASSTO、あなたのお近くにもあるかもしれません。また、「宅配PASSTO」は条件を満たすアイテムを入れれば無料で送ることができます。使わなくなった洋服や雑貨を、一度パストしてみてはいかがでしょうか?
▶︎ PASSTO公式ページ
▶︎ 宅配PASSTO
ワタシトJOURNAL
ワタシト編集部が共鳴した、サーキュラーエコノミーの実現を目指す取り組みやプロダクトを訪ねていくシリーズ。アーカイブはこちらからご覧いただけます。
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※本記事の内容は、本記事作成時の編集部の調査結果に基づくものです。
