ヴィンテージスカーフを、アップサイクル。エシカルでかわいい「チコラッテ」って?
色とりどりのヴィンテージスカーフをアップサイクルしたバッグやポーチを販売するChicolatte(チコラッテ)。
ハンディキャップのある方々と共に製作していることも特徴のブランドです。エシカルな取り組みを始めた理由とは?チコラッテ代表の藤永真理子さんに話を伺いました。
人気商品をつくるのは就労継続支援事業所の人々
チコラッテ代表兼デザイナー藤永真理子さん
━━ どれも素敵な商品ですが、どんなタイプが人気でしょうか?
時期にもよりますが、春シーズンはギフト需要が高く、プレゼントしやすいポーチなどが人気です。全て1点物で、少しずつ雰囲気が違うので、複数買う方も多いですね。
通年だと、3WAYで使えるパイピングバッグは人気があります。色々な持ち方ができて、かさばりにくいので、旅行の時も使いやすいです。
━━ 種類が豊富で、用途に応じて選べますね。
ティッシュポーチや船型のポーチなど、ポーチでも5種類あります。リバーシブルで使える巾着もおすすめです。
就労継続支援事業所さん*と一緒に、製作できる形を相談しながらバリエーションを増やしてきました。
* 障害等の理由で、一般企業等での就労が困難な人に働く機会を提供している。
パイピングバッグ
━━ 就労継続支援事業所さんとの製作を始めたのはなぜですか?
アップサイクル商品のブランドの人から「こういう事業所が千葉にあるから相談してみたら」と言われたのがきっかけです。そこで紹介されたのが、今も一緒に仕事している事業所さんでした。
お話を聞いて、業務のベースだけつくれば、生産量は確保でき、ビジネスとして成立すると考えました。あとは、単純に一緒に仕事してみたいと思いました。就労継続支援事業所の方々は真面目な人が多いんです。
例えば、曲線のステッチが少し曲がってると、たとえ許容範囲でも、糸を外してしまうほどです。事業所さんとの仕事も長くなってきて、今は裁断や縫製だけでなく、生地の管理からパターンに起こす作業まで、色々な仕事をお願いできています。
アパレル業界での経験がアップサイクルに繋がった
━━ アップサイクルは元々しようと思ってたんですか?
古着が大好きなので、アップサイクルは考えていました。あとは、アパレルのメーカーで働いてた時に、大量生産に疑問を持っていたのもあります。
私が働いていた時代は、たくさん量をつくって、2週間で売り切って、すぐ新しい商品をつくるような、ものすごい早いタイムスケジュールでした。今は見直されていると思いますが、当時の生産の現場は本当にすごくて。ついていけなくなったのが、メーカーを辞めたきっかけでした。だから、元々あるものを使って、もの作りしたい気持ちはベースにありましたね。
━━ アパレルメーカーで働かれていたんですね。
そうですね。高校卒業後、1年間カナダに留学して、日本に戻ってからアパレルメーカーを転々としていました。その時に、音楽関係の知人からアーティストの衣装の依頼があったのが、そもそものブランドをはじめたきっかけでした。駆け出しのアーティストさんは、予算の関係で新しい衣装をつくれないから、前の衣装を生かせないかと言われて、その頃からリメイクをしていましたね。
━━ そこからなぜ小物商品の製作に?
小物商品にたどり着いたのも、事業所さんとのやりとりからでした。洋服のリメイクも考えたのですが、洋服は一体一体サイズが違う。その一体一体に対して、型紙を作って、製作してもらうのは現実的じゃなかった。事業所の方々は、同じ作業をリピートすることが得意で、ポーチなどの小物商品がいいかもしれない。事業所のみなさんと相談しながら、3~4年試行錯誤して今の形になりました。
マチ付きポーチ
━━ スカーフを素材にしているのはなぜですか?
ヴィンテージのシャツやワンピースも柄がかわいいものが多いんですが、裁断がすごく難しいんですね。事業所で色々な人が作業しやすいことを考えて、もともと「面」であるスカーフに辿り着きました。業務は分業にしているのですが、スカーフはアイロンがかけやすく、ハサミが入れやすく、裏地も圧着させやすいんですね。柄も豊富で、お客さんにもわかりやすく魅力が伝わるのもよかったです。
購入してからエシカルなことに気づいてもいい
━━ 購入する方もエシカルであることは意識されているんでしょうか?
若い層は、意識している人が多い気がします。チコラッテのお客さんは40代以上の人が多いのですが、まだそこまで浸透してないと思います。
去年から海外での販売を始めていますが、海外の人は意識が高いなと思います。アップサイクルだから、チコラッテの商品を買ってくれる人が多いんです。去年、台湾に出店した時は、お客さんに素材や生産過程のことを質問されて意識が違うなと思いました。
━━ チコラッテは、エシカルなポイントを前面に出していない印象です。
そこまで前には出してないかもしれないですね。そういうことを謳わなくても、商品をいいなと思って買って、もうちょっと調べてみようと思った人たちが、アップサイクルしているんだと知ってもらえたら、それでいいかなというスタンスです。
ありがたいことに、購入してから気づくお客さんも実際にいます。そういうお客さんは、長く応援してくれて、リピートしてくださる方が多いですね。
かっこいい、憧れ。付加価値をつけることが大事
━━ チコラッテは今年10周年だと伺いました。これまで大変だったことは?
作りたいもの、作れる量、売りたい時期のバランスをとることは今でも難しいです。
商品が売れる時期でも、作業を詰め込みすぎるのは現実的に難しい。事業所さんは春になると卒業される方がいるんですね。そろそろ新しい商品を仕込みたいけど、その時期は無理を言えないなとか。一方で、お願いしている事業所さんはB型*で、手を動かさないと工賃が発生しなくなってしまうので、ストップせずに発注しないといけない。その全体のバランスを整えるのは難しいですね。
*就労継続支援B型。障害による困りごとの状況や症状などに合わせて、時間や作業が調整しやすく、無理のないペースで働くことができる点が特徴。業務内容や量に応じて工賃が支払われる。
━━ 事業所の方々と二人三脚で進めてきたんですね。業務をされている方々から声はありますか?
作業は分業されていますが、アイロンをかけるのが好きな方、生地を切るのが楽しい方、それぞれいらっしゃるようです。そう思っていただけて、こちらもありがたいです。事業所に伺う時は「この間の商品すごく綺麗に縫えていました」「最近はここで売ってます」「この商品よく売れています」などをお話すると、すごく喜んでいただけますね。
今は主に2つの事業所さんに発注していますが、一緒に仕事ができる方々も増やしていけるといいなと思います。
━━ 最後に、ファッションがエシカルに、サステナブルになっていくにはどうしたらいいでしょうか?
環境問題などに取り組んだ方がいいからやるのではなくて、付加価値をどうつけていくかですかね。ファッションはあくまでもかっこいいとか、憧れるとか、そういうものがベースにならないと続いていかないので。環境にやさしい取り組み自体がかっこいいという認識になって広がっていくのが理想的なんだろうなって思います。
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見ているだけでワクワクする、チコラッテの商品。すべて一点物だからこそ、きっとお気に入りのアイテムが見つかるはず。
そのお気に入りのアイテムが、ファッションのサステナビリティや福祉について、考えるきっかけになるかもしれません。