その座敷机、捨てないで!一枚板を生まれ変わらせるrewoodが目指すサーキュラーエコノミー
みなさんの家に、座敷机はあるでしょうか。現代では洋室でダイニングテーブルを使っている人の方が多いかもしれません。
かつて日本中で使われていた座敷机は今、捨てられつつあります。しかし、昔ながらの座敷机には、一枚板が使われているものがあり、現在では希少な木材だそうです。
そんな一枚板を買い取り、現代に合わせた形で再生しているのが「rewood(リウッド)」です。一枚板の魅力や、再利用するメリットについて、rewoodの水野照久さんに話を聞きました。
樹齢200年の希少な木が捨てられている
rewoodを運営する有限会社みずのかぐの水野照久さん。取材はオンラインで実施しました。
━━ rewoodの商品は、昔の座敷机からつくられたとは思えない現代的なデザインです。
昔の和室にあるような、座敷机のツヤツヤした仕上げは今は人気がないんです。だから、削って、自然なオイルで仕上げ直しています。
買っていただくためには、エコだとか森林を守れるという価値よりも、お洒落でかっこよくて、今の暮らしにあったデザインがすごく大事です。だから、座敷机だったと気づかれないくらい、あまり野暮ったくならないように気をつけています。
━━ 座敷机の中でも、一枚板を使っているのが特徴ですが、魅力は?
まず、一枚板自体がとても希少なんです。例えば、幅90cmの一枚板のテーブルは、それだけ太い幹の木を使っているということ。それって、樹齢200年ぐらいの木なんですよ。今は非常に希少価値があって、もうあまり見られない木材です。
樹種も貴重なものが多いです。例えば、ケヤキは、寺社仏閣に使われるような高級品です。あとはアフリカ材のブヒンガも多いんですが、今は伐採禁止で輸出も規制されていてなかなか手に入らないんですよ。
その貴重な一枚板が、座敷机として日本中に眠っているわけです。
━━ なぜ一枚板の座敷机が日本中にあるんでしょうか?
1970年代から1980年代、一枚板の座敷机が大ブームになったんです。約10年間で30万枚ほど生産されて、日本中の家で使われていたんですよ。
そういった家が今ちょうどリフォームや建て替えの時期になって、ツヤツヤの重たい座敷机は需要がなくなってきているんですね。
でも、捨てるのは忍びない、捨てちゃダメなんじゃないかと思う方々がいて、僕らに買い取りの依頼がきます。
━━ 30万枚あった座敷机が手放されているのが今なんですね。すごい量になりそうです。
rewoodをはじめて6年間で、1550枚の買い取りをしてきました。
さらに、買い取りの査定依頼は月に150~200件ほど来ています。だけど、僕らも運賃の負担などもあって、いい金額では買えないんです。当時は100~200万円した座敷机ですから、期待に添えないことがあって、最終的に購入させていただけるのは15%ぐらいです。だから、結局捨てられてしまったり、家の解体時に処分されたりしているものも多いと思います。
一枚板をほぼ永久に使い回せる仕組みを
買い取られた一枚板の天板
━━ そもそも、水野さんはなぜ一枚板に注目を?
僕らはオーダー家具を製作する会社なんですが、完成した家具を配達する時に、不要な家具をいただいて帰るんです。その中に、座敷机が結構あったんですよ。
「貴重な一枚板だ」と思うと捨てられなくて、倉庫にどんどんたまっちゃいました。それで、ある日削って、ダイニングテーブルにしてみたら売れたんですよね。それがきっかけで、貴重な一枚板でも、お手元に取りやすい値段で流通させられるんじゃないかと思ったんです。
━━ 購入されるのはどんな方ですか?
一般の方が6割ぐらい。あとは建築屋さんや設計士さんに建材として使ってもらっています。
去年あたりからは、サーキュラエコノミーを意識した大学や銀行、 大手メーカー、ホテルからのご相談も増えました。販売した一枚板の家具を、買い取り保証するサービスを新たに始めたんですが、それを評価してもらえたという点が大きいですね。買い取った家具をまた削ることで、ほぼ永久に使い回せる仕組みができたんです。
━━ rewoodの商品を、さらに再生するんですね。
木なので、削って仕上げれば新品同様になるんですよ。 だから、中古という言葉はしっくりこなくて、再生したものは新品だと思っています。
一般の方も、お引越しで部屋に入らなくなったから違う板に変えたいとか、雰囲気を変えたいから3年だけど違うのにしたいという人がいます。そこで、買い取りして、また新しいのを買っていただいたりしていますね。
森林伐採や円安で、木材自体が貴重になる
━━ 環境にとっても大きなメリットがありそうです。
木材業界でいえば、森林伐採は、非常に深刻な状態ですよね。
座敷机の買取依頼が200件も来るくらい、周りに使える資源があるのに、森林伐採は止まらない。例えば、アマゾン流域の森林は、たくさんの炭素を蓄えているわけですが、今も急速に破壊されています。みんな異常気象で困っているはずなんですが、止まらないんです。
森林伐採が全て悪いわけじゃないですが、その土地の生態系にあったバランスは大事です。そのバランスを整えられるように、木材についても、身近にあるものをどう使えるかをみんなで一緒に考える場所があるといいなとはすごく思っています。
━━ 日本の状況はどうでしょうか?
日本の木材市場は今、全然在庫がないという問題があります。コロナ禍にウッドショックがあって木材が高騰した上に、現在は円安で他国に木材が買われてしまっている。日本は海外の木材を買えていないんです。
日本は森林大国で、6割は森ですから、国産の木材がたくさんあります。ただ、取りやすい場所にある大きい木はもうほとんど取り尽くしているんです。
森の奥に入れば、大きい木がまだまだあるんですが、コストがすごく高くなる。それで市場の大きい木は枯渇し始めている。大変なんですよ。
━━ そのために、一枚板の再利用は有効になるかもしれない。
これから、木材自体が非常に貴重な素材になる。いや、もうなってきてるかもしれない。だから、エネルギーを使わずに、近くにある資源をうまく使う方法を考えないといけない。僕は小さくやってるだけですが、日本の座敷机もまだまだありますから、それを使うだけでも違うと思います。
とはいえ、コストを含め、商売としてはなかなか難しく、簡単ではないです。みんなで考えなければいけない問題です。
一枚板の使い道を、みんなで考えたい
━━ 座敷机の一枚板をもっと活用するために、何ができるんでしょうか?
僕らは家具屋なので、使い道として家具は思いつきます。あとは、建築屋さんやデザイナーさんとお仕事してるので、階段の踏み板にしてもらったり、キッチンのテーブルにしてもらったり、建材として使ってもらったりしています。
これからは、全然違う業種の方に一枚板を知っていただくことで、 僕らには考えもつかない使い道が広がると思うんですよ。例えば、この間は、ノベルティを作ってる会社さんが、トロフィーの台に使いますと言っていました。
商品を買っていただくのはもちろん嬉しいんですけど、素材として一緒に使い道を考えていただける仲間が増えるといいなと思います。
━━ 小物商品も、その一つですよね。
小さい車や鳥の置物、ドアレバーなどですね。これは、座敷机の脚が余っていて、色々な方に使い道を相談してできました。結構売れていて、今や脚が足りなくなりつつあるほどです。
一枚板自体もですが、端材も出てくるので、生活の中に何か使えないか、使い道を考えてみてほしいですね。サイドテーブルとか、お盆、お皿もいいかもしれないです。
━━ 一枚板の利用を広げていくために、rewoodとして取り組みたいことはありますか?
目につくところに、使っていただくのが1番だと思っています。例えば、今は人気コーヒーチェーンにプレゼンするために、テーブルチェアのセットの商品開発をしています。
「この木なんだろう、座敷机だったのか」と、たくさんの人に気づいていただけるところに、うまく採用していただけると嬉しいです。
◇◇◇
「商品を買ってもらうのも嬉しいが、一枚板の使い道をみんなで考えたい」と水野さんは繰り返しました。
身近な木材は、実は貴重な資源になりつつあります。まだまだ使える一枚板を捨てずに、その魅力を生かす方法を考えてみませんか?
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